ロジカルシンキングにおける基本的知識として、MECE(ミーシー)があります。
今回はMECEの意味と切り口について分かりやすい例題を交えて解説したいと思います。また、MECEの際に注意すべき点についても解説したいと思います。
MECEの意味と役割
先ほどご紹介したように、ロジカルシンキングのツールとして、MECE(ミーシー)があります。
「mutually exclusive, collectively exhaustive」の頭文字をとったものです。日本語に訳すと、「モレなく、ダブリなく」になります。
このMECEは、ロジックツリーなどで物事を分類する時に意識をする必要があります。特に、whatツリーを用いて、要素分解する際にはMECEの意識が重要になります。
また、MECEの切り口(分類の仕方)も重要な要素です。次に、切り口の考え方について解説したいと思います。
MECEの切り口
MECEの切り口とそれを用いた具体例・フレームワークを解説したいと思います。
因数分解法
概説
因数分解とは、対象を構成要素に分けて考える方法です。逆にいうと、対象の構成要素をかけ合わせると元の対象になるわけです。
イメージとしては次の通りです。
フレームワークで考えると、4M分析(品質管理)や3C分析(マーケティング)が該当します。
- 人(man)
- 機械(machine)
- 材料(material)
- 方法(method)
- 自社(company)
- 市場・顧客(customer)
- 競合(competitor)
具体例
チェーンスーパーのマーケティングを想定する際には、3C分析によって情報を整理することが出来ます。
例えば、以下のような3C分析がなされたとします。
- 自社
仕入れ先の多様性・目利き(+)
流通コストによる原価高(-) - 競合
海外ルート充実による低価格(-)
生鮮食品が低品質(+) - 市場
1人暮らしの増加
ファミリー層減少
この3つの要素を総合的に考えると、次のような対策例が挙げられます。
- 1人暮らし用に食品を小分けにする
- 生鮮食品を活用した総菜の充実
- 低価格ブランドの立ち上げ
二項対立法
概説
二項対立法とは、対象をAとnotAに分けて考える方法です。
因数分解法と比較しても様々な切り口があるので、センスが問われます。その分、上手くやれば大きな効果を得られます。
イメージとしては次の通りです。
具体例
例えば、コンビニに来店する顧客は、次のような属性に分けることが出来ます。
- 男性と女性
- 新規とリピーター
- 成年者と未成年者
- 現金利用者とそれ以外
- 会員と非会員
上記のデータから2種の属性を抜き出した二軸分析という方法もあります。
プロセス法
概説
プロセス法は、時系列や手順ごとに分解する方法です。
代表的なフレームワークだとPDCAサイクル・経験学習モデル・バリューチェン分析が挙げられますね。
- 計画(plan)
- 実行(do)
- 評価(check)
- 改善(action)
- 経験
- 内省
- 概念化
- 試行
- 商品企画
- 調達
- 加工
- 出荷
- 販売
- 結論
- 理由
- 具体例
- 結論
具体例
自社でネット通販を実施するとします。その流れをPDCAサイクルで考えてみると次のようになります。
- 計画(P)
商品AとBを100個仕入れて、10万円の利益を得る。 - 実行(D)
SNS活用・ネット広告 - 評価(C)
ネット広告効果大・商品A売れ行き好調 - 改善(A)
ネット広告重視・商品A仕入れ増
各プロセスに分けることで、緻密な検討が出来るようになり、モレ・ダブリをなくすことが出来ます。また、思考が可視化されるので、チームでの情報共有・意思統一が容易になります。
尺度分割法
概説
尺度分割法は、尺度を元に複数のグループに分割する方法のことです。
定量的に表せる場合は、数値を尺度とします。ただ、定性的にしか表せないものは、表現を尺度とする場合もあります。
代表的なフレームワークだと、SWOT分析・PPM分析などが挙げられます。
SWOT分析:内部要因である自社の強み・弱みと外部要因である機会と脅威に分けて考える。
PPM分析:縦軸に市場成長率・横軸に市場シェアをとった二軸の図で情報を整理する。
具体例
商品A、B、C、DをPPM分析すると、次のことがわかりました。
- 商品A
市場成長率高、シェア高 - 商品B
市場成長率高、シェア低 - 商品C
市場成長率低、シェア高 - 商品D
市場成長率低、シェア低
この情報が分かれば、特に注力しなければならない商品はBになります。Bのシェアを増やせば、商品Aと同じようなスター製品になれるわけですからね。
MECEの注意点
MECEの言葉通り、モレなく・ダブリなく分割・分類することは大切です。しかし、それに囚われて分かりづらい分類になっては意味がありません。
あくまで物事をモレなくダブリなく分類するのは手段であり、目的は対象を理解することです。
大切なのは、分析できる情報であることです。
ここで、分析という言葉の意味を調べると、次のように定義されています。
複雑な事柄を一つ一つの要素や成分に分け、その構成などを明らかにすること。
引用:デジタル大辞泉
この言葉の定義にもあるように、要素に分解するのは複雑な事柄を理解するためです。
皆さんもこの目的意識を持ったうえで、MECEを行うようにしましょう。
まとめ
MECEの意味と役割
「mutually exclusive, collectively exhaustive」の頭文字をとったものです。
日本語に訳すと、「モレなく、ダブリなく」分類することを指します。モレなく・ダブリなくを意識して、分析することにより抜け目の計画・対策・要因分析が出来ます。
MECEの切り口
MECEの切り口は、次の4つに分類することが出来ます。
具体例:3C分析、4M分析
具体例:シンプルなので、特になし
具体例:PDCA・経験学習・バリューチェーン
具体例:SWOT分析・PPM分析
MECEの注意点
あくまで物事をモレなくダブリなく分類するのは手段であり、目的は対象を理解することです。ですから、MECEを第一義的には考えないようにしましょう。
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